人物語CASE1馬に憧れて千葉県の学校から浦河にやって来た
鈴木優佳さん(20歳)
神奈川県出身。
千葉県内の動物関係専門学校を卒業後、
「AERU」(馬・自然と触れ合える宿泊
・体験施設/浦河町)に
乗馬インストラクターとして、2015年4月入社。
1-1馬を切り口とした、体験・観光施設
期待されていることはいっぱい。
若さを武器に頑張ります!
国道235号線から分かれて日高山脈に向かって走る天馬街道。
その両側にはしばらく馬の放牧場が続きます。
整備された柵の中に数頭のサラブレッド。
2、3年後には中央競馬や地方競馬で活躍する名馬がそこから育つのかもしれません。
私がいま1日の大半を過ごす「AERU」にも
かつて競馬界で優秀な成績を収め引退した名馬が余生を過ごしています。
加えて、10頭を超える馬を飼育。
しかし、その種類や飼育の目的は周辺の牧場とは大きく異なります。
馬を眺め、馬と触れ合い、馬との時間を楽しめ、
宿泊もできる観光施設、それが「AERU」です。
初心者から中級者まで多くの馬好きが一年を通じて訪れます。
私達スタッフは、飼育している馬の世話、管理、調教を行い、
乗馬体験のインストラクターとしてお客様を迎えるのが仕事。
一日中馬と接し、馬とお客さんを繋ぐパイプ役として
期待されていることはたくさんあるのです。
わかっています。
私はまだハタチ。でも私、頑張ります。
1-2「AERU」にもとめたやりがいと責任
いま一番の相棒はジロウ
「キミはまだまだのびしろがある」
ジロウという半血種の馬がいます。
(馬の分け方の一つでサラブレットなどを温血種、ブルトンなどを冷血種と呼び
両者の交配によって生まれたものを半血種と呼びます。)
実は彼とは「AERU」ではほぼ同期。
実年齢では私がちょっとだけ上という関係。
そんなこともあって、何か気になる、手こずることもあるけど何か好きな馬です。
入社1年の私が会社の中で一番心を許せる仲間かもしれません。
子どもの頃から動物好きだった私が「動物園の飼育員なんていいな」
と思いながら入学したのが千葉県にある動物専門学校でした。
研修先として派遣された施設の一つがここ「AERU」。
そこでの飼育研修は本当に音をあげそうなくらい厳しいものでしたが、
馬と触れ合う毎日、
日本で一番、人口密度ならぬ「馬口密度」が高いんだろうなぁという地域の環境が、
卒業後、ここに仕事を求める動機となりました。
入社1年、自分自身の乗馬訓練も、
馬の世話の経験もずいぶん積ませてもらいました。
初級者から中級者まで訪れる乗馬体験のお客様への接し方も
少しは慣れてきたつもりです。
上司から「キミはまだまだのびしろがあるし、
お客様を楽しい気分にする明るさがいいと思って採用した」
そんな言葉を頼りに毎日頑張っています。
1-3お客様がこの施設と私たちに求めるもの
馬から教えてもらうこともある
お客様から感動をもらうこともある
朝6時頃から餌やりに続いて朝の運動、
引き馬やトレッキングのための準備、
お客さまへのレクチャーと体験の実施へと続きます。
中級者になると「AERU」場内だけでなく、
お隣の「JRA日高育成牧場」の敷地をお借りしてのトレッキングを行うことも。
「JRA日高育成牧場」へは見学ツアーも企画されており、
お客様には大人気です。
そんな仕事の合間には、
厩舎の掃除や、自分自身の乗馬訓練と、休む間はありません。
スタッフでシフトを組みながらスケジュールをこなしていきます。
1年を経験してやっとペースがつかめてきたというところでしょうか。
初めての馬体験で目を輝かせ大喜びしてくれる子供たちがいます。
私よりずっと乗馬経験が豊富で、
逆に教えてもらうことの多い常連さんがいます。
競輪の現役選手は、乗馬と自転車の共通点を教えてくれました。
乗馬そのものとともに、
周囲の植生や野生動物に興味を持つお客様も多くいます。
北海道の植物や動物についての本を会社にお願いして購入しました。
1-4「AERU」が浦河の中でできること
馬で神社を参拝!
まだ、何かできそうな気がする
近くの障がい者施設の子供たちが遊びに来てくれたとがあります。
自閉症の子供が引き馬体験をして、みるみる表情が変わっていくのに感激しました。
乗馬セラピーとして正式に確立することはそう簡単なことではありませんが、
そんな可能性も求めていいのではないかと思っています。
馬は公道上では「自転車」(軽車両)の範疇に分類されます。
施設の外に出て行くことも比較的簡単ということになります。
今年のお正月には役場の「地域おこし協力隊」の方と相談して、
「AERU」の近くにある「西舎神社(にしちゃじんじゃ)」に
馬に乗って参拝するという企画を実施しました。
「AERU」は浦河の観光の拠点として期待されながら誕生したところ。
もっと地域の皆さんと連携して、活動できる範囲があるのでは?
まだ1年目の私ですが、少しづつ考えていきたいですね。
周辺の牧場で働く同じ女性スタッフの友人ができました。
浦河に住む若い人たちと休みの日に遊びに行く機会も増えました。
浦河は大好きな馬がそこらじゅうにいる環境。
まったく縁もゆかりも無かったところが、
今や私の大切な場所と変わりました。
まずは、乗馬振興協会の初級指導者の資格をとること。
そして、お客様に「AERU」の楽しさ、
浦河という町の素晴らしさを知ってもらうこと。
それが今の目標です。