人物語CASE6山の仕事と人生経験を自然体験活動に活かす

大樹町の森の達人

菅敏範さん(70歳)
1964年から2006年まで営林署員として大樹町に勤務。
2007年から2011年と2015年から現在、
町議会議員として活躍中

大樹町の森の達人
※内容は取材当時のもの。

6-1父のあとを追って山の仕事へ

伐木手だった父のあとを追い、
大樹町の山で育ち、仕事場とした人生

大樹町の山間の地区で生まれ、
父の仕事が伐木手だったことから、
小さな頃から遊び場は山や森の中でした。
動物、野鳥、昆虫が友達、という生活だった私は、
高校卒業後、林野庁の営林署に入署。
そのままずっと転勤せずに42年間、
大樹町の山を仕事場にしてきました。
そんな私ですから、
木を見ただけで名前はもちろん、
木材としての利用価値も分かるし、
一般の人が入れない場所で、
人生で一度遭遇できるかどうか分からないような、
自然の営みに出会うこともありました。
大樹町の山、森は、
私にとって故郷そのものであり、
親であり教師でもありますね。

フィルタ 6-1

6-2山の仕事を自然体験活動に

人生経験を活かし、
自然体験活動の講師に

そんな生まれ育った環境や仕事がら、
これまでさまざまな自然体験活動の講師などを務めてきました。
例えば、北海道教育委員会が取り組んでいる
青少年自然体験活動の講師は、夏冬合計3週間ほどの講習を受けて、
星座の勉強やイグルーの組み立て方なども学びました。
STEP(南十勝長期宿泊体験活動交流協議会)が取り組んでいる
農林水産省や文部科学省ら4省による連携支援事業では、
本州の子供たちから地域の子供たちまでを対象に、
大樹町内の農家のお手伝いや民泊など、
地域との交流を取り入れた自然体験活動を実施。
そのお手伝いもさせていただいています。
大樹町内を流れる歴舟川は、環境省が実施している河川の水質調査で
「日本一の清流」の指定を何度も受けていますが、
私は「歴舟川の清流を守る会」の会員として、水質調査や清掃活動に参加。
子供たちを招いた活動では、カムイコタン「遊々の森」で
森林教室などを行うこともあります。
遭難救助の訓練も受けていますので、事故があれば今でも救助要請が入ります。
一生、山との縁は切れませんね(笑)。

フィルタ 6-2

6-3気軽に遊べる自然を子供たちに残したい

イキイキと薪割り体験に挑む
子供たちの姿は逞しい

今の子供たちが自然体験活動に来ると、
普段、森や木に接する機会がないから、
用意した薪割りなどのメニューに、
とても興味を持ちますね。
まだ非力な子供でも、
重たい斧を必死に担いで、
一生懸命やろうとしてくれる。
だから体験プログラムを組む時に、
「ゲームばかりやっている子供たちは、
こんなことに熱中しないだろう」と
固定概念を持って考えてはダメ。
道具は足りなくなるし、
やり足りなさを感じた子供たちが、
翌朝早起きしてやりたいと言ってきたり。
そんな子供たちの逞しい姿を見ていると、
もっと気軽に遊べる自然を子供たちに残していくのが、
大人の務めだとつくづく感じますね。

フィルタ 6-3

6-4まだまだ残る美しい大樹の森

山・道有林などとともに生きて遭遇した
険しくも美しい大樹の山と川

大樹町の市街地から望める日高山脈の奥地には、一般の人々が簡単に近づけない険しい山々が多くあります。
それだけ豊かな自然が残されているともいえます。
かつての国有林・道有林などには木材として価値の高い道産広葉樹が多く、
1本300~500万円の値が付く木もありましたよ。
険しい山の沢を登っていくと、
魚体の美しいヤマメがたくさん釣れる場所がありますし、
紅葉の美しさは思わず息をのみますね。
渓谷がひらけているところは格別です。
しかし、紅葉が始まると寒さが急に厳しくなるので、
美しい期間はほんのわずかなのです。はかないですね。
以前、仕事で山に入り、ザリガニの滝登りや沢カジカが逆さになって
石の裏に卵を産み付ける様子に出会ったこともありました。
50年の山人生で、1度くらいしか見られない貴重な体験でしたね。
一般の方は、カムイコタンのキャンプ場などでも
自然体験やきれいな紅葉も観賞できますし、
自然体験プログラムが開催された時は気軽に参加して、
大樹町の自然に親しんでもらえればうれしいですね。

フィルタ 6-4

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