人物語CASE4様似で育ち、様似の歴史と文化を守り伝える

アポイ岳ジオパークガイド

水野洋一さん(65歳)
えりも町に生まれ、中学生から様似町で育つ。
大学卒業後、様似町の教育委員会勤務、
主に社会教育の分野で活動。
現在、様似町議会議員、アポイ岳ファンクラブ、
アポイ岳再生委員会、様似歴史研究・会所の会、
北海道高山植物保護ネットのメンバー。

アポイ岳の高山植物ガイド
※内容は取材当時のもの。

4-12015年、ユネスコ世界ジオパーク認定

気がつけばテント生活の大学教授
地元が気付いていなかったアポイ岳の価値

地層・岩石・地形・火山・断層などのジオ(地球)に関わる大地の遺産や
自然・文化遺産を学び楽しむ地域として認定された公園をジオパークと呼び、
日本には現在39箇所。
そのうち8箇所がユネスコ世界ジオパークに認定されています。
アポイ岳を含む様似町は昨年9月に認定された、
日本で8番目のユネスコ世界ジオパークです。
北海道内では洞爺湖有珠山に続く2番目の認定となりました。
地質学上の大きな特徴はアポイ岳の「かんらん岩」という、
本来は地下深くに眠っている岩石が地表に露出していること。
栄養に乏しく植物の生育を阻害する成分(ニッケルやマグネシウムなど)を多く含むため、
一般の植物が駆逐され、810mという低標高にも関わらず、
固有の高山植物が群生することになりました。
その数80種以上と言われています。
ヒメチャマダラセセリという、
国の天然記念物に指定されている蝶も生息しています。
古くから学者や一部の研究者には注目されており、
山麓にテントを張って、数日にわたり観察を続ける、
そんな人たちがアポイ岳には昔から数多く来ていました。

フィルタ 4-1

4-2図書館の建設とジオパークの出会い

中学生に高山植物の種
町民に少しづつ広がる環境を守る意識

大学を卒業した私は故郷で教員になることを希望していましたが、
役場に就職し、配属されたのは教育委員会。
以来、異動することなく教育委員会で活動し続けてきました。
中でも主に担当したのは「社会教育」分野。
その関係で町の図書館の建設に関わることになったのです。
町の規模からすると大きすぎないかと言われた施設ですが、
町民に啓蒙し、様似の貴重な自然環境をアピールするには大きな貢献をする施設となります。
アポイ岳を訪れる学者や先生方に集まっていただき、
フォーラムを開いたり、お互いの研究成果を発表し
議論していただく場として提供したのです。
もちろん、町民にも開放する機会を増やしました。
やがて、それが札幌などの地域での
フォーラム開催などの活動へも発展していきました。
観光もそうですが、やはり一番大切なことは
まず地元の皆さんがその環境や事象に対して関心を持つこと。
若い人が知識を持ち、その活動に参加する機会を増やすことですね。
高山植物の種を中学生に託して、
一般家庭で苗を育てていただく取り組みも始まっています。

フィルタ 4-2

4-3町として取り組むガイド活動

町全体で取り組むガイドツアー
未来につながる若いガイドの育成

ユネスコ世界ジオパーク認定も追い風となって、
道外の皆さんにも様似町やアポイ岳の認知度が高くなったように思います。
高山植物を標高約800mという比較的手軽な登山で見ることができるという環境は
願ってもない町のアピールポイントであり、観光資源でもあります。
町の商工観光課とアポイ岳ファンクラブなどの組織が一体となって
「アポイ岳ジオパークガイドサービス」の仕組みを整えています。
登山を含む高山植物ガイドから
史跡、文化遺産を巡るフットパスのガイドまで、
利用者の関心や意識、目的に沿って
より有意義なガイドができるよう心がけています。
今は仕事をリタイヤしたベテランガイドが中心ですが、
意欲ある若いガイドの育成もこれからの私たちの役割ですね。

フィルタ 4-3

4-4自然や環境に向ける眼の変化を

自分の地元に持ち帰って
新たな目で自然や文化遺産を見てほしい

お願いしたいのは、表面的な「見物」に留まらず、
なぜこのような特殊な地形、環境ができあがってきたのか?
植生の変化、地球や宇宙の成り立ちにまで広がる豊かな知識を得る場として
活かしてもらうことができたら…、私たちはそう考えています。
だから、ぜひツアーの前に「ビジターセンター」で基礎知識をしっかり学んでほしい。
どんなことでも疑問に思ったことは聞いてほしい。そう考えています。
ガイドを依頼する方々は、「知りたい」という意欲をお持ちの方。
私たちもそう考えていますから、
臆せず持っている限りの情報をお伝えするように努めるのです。
もちろん、グループの中にも温度差はありますから、
その辺はコミュニケーションを通して探りますけどね。
そして、私がもうひとつガイドを通して皆さんに伝えたいことは
「家に帰ったら、今度は自分自身の地元についてぜひ見直してほしい」ということです。
様似がそうであったように、
日本中どこでも他にない貴重な自然や環境が残っているはず。
それをもう一度再認識する機会としてほしいと思っています。

アポイ岳ジオパークガイドサービスについてのお問い合わせ・相談窓口
アポイ岳ジオパーク推進協議会事務局(様似町役場商工観光課内)
電話:0146-36-2120 E-mail:apoi.geopark@festa.ocn.ne.jp

フィルタ 4-4

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